予算・参加費を決める

イベントの予算を考えるためには、どのような費用が掛かるのかをあらかじめ知っておかなければなりません。イベントで掛かる一般的な経費と参加費の決め方について解説します。

イベントに掛かる経費

イベントにかかる経費には、会場費以外にもさまざまなものがあります。イベントを企画する際には、最初に必要な金額を考えておかなければ、予算オーバーで赤字がどんどん増えていきます。予算を決める前に、まずはどのような経費が必要かをざっと見ておきましょう。

会場費

会場費は会場そのものの室料と、マイクやプロジェクターなどの映像音響機器などを含めた付帯設備に掛かります。室料以外の料金が掛かる可能性をきちんと考えておきましょう。

エアコンの使用料が掛かる会場もありますので、予算取りをする際には、会場の利用金額は細かいところまで確認しておきます。詳しくは「開催場所(会場)の選び方」のページもご確認ください。

講師料

外部から講師を招く場合には、講師料が必要になります。金額は講師次第ですので、どのくらいの金額かわからない場合には、その人本人に聞くか、講師派遣サイトなどで確認しましょう。いろいろなイベントに呼ばれる人は、基本的な時間や料金などが決まっているはずです。

もし予算が合わない場合という場合は、あきらめるか金額の交渉をすることになります。講師との関係にもよりますが、あまりにも安い金額を提示することは、講師に対して失礼になるため注意が必要です。

また講師料以外に交通費・宿泊費が掛かります。基本的には講師の飛行機や新幹線代などはイベント主催者の負担になると考えておきましょう。イベントの開始・終了時間によっては、2泊分の費用が掛かることもあります。

交通費は実費で支給という場合も多いですが、切符やICカードの履歴を提出してもらうのは難しいため、講師の最寄り駅からの正規の料金を計算し、それに1泊1万円などで計算し、講師料○○円・交通宿泊費○○円という形で提示し、その料金で了解してもらうとスムーズに進みます。

あるいは講師料・交通宿泊費全部込みでいくらという形で提示するのもよいと思います。

印刷物

宣伝のためのチラシやポスター・アンケートなどの印刷物全般の費用です。

印刷コストを安くしたいのであれば、印刷用のデータは自分で作り、ネット印刷を利用します。何千枚・何万枚のポスターを作るのでなければ、あまり大きな費用にはなりません。

ウェブだけで集客するのであれば、アンケートなどのコピー代程度で済みますので、印刷代は非常に安くなります。

スタッフ

イベントの規模が大きくなってくると、受付スタッフや会場の誘導係を誰かにお願いするなど、スタッフが必要になってきます。

仲のよい友人であればボランティアで手伝ってくれる代わりに、イベントには無料で参加してもらうというような形で交渉できることもあるでしょうが、そうでない場合には、時給・謝礼が発生します。

金額はお手伝いしてくれるスタッフとの関係にもよりますが、通常のアルバイト代くらいは必要と考えておきましょう。

スタッフはイベント開始前から来なくてはならないため、食事の時間に掛かることもあります。この場合の食事代も、できれば主催者が負担するようにしましょう。

もちろん求人サイトなどで募集する場合には、提示している条件に従えば問題ありません。

ポイント

会場費・人件費(講師+スタッフ)・雑費が予算決定の基本となります。特に最初の2つがイベントのほぼすべての費用になると言えますので、慎重に金額を調べるようにしましょう。特に会場の付帯設備については見落とさないようにしてください。

無料・有料のメリット・デメリット

そもそもイベントで収益を上げる必要があるかどうかが重要ですが、趣味のイベントで儲からなくてもよいし、経費もそれほど掛からないというイベントであれば、会場費のみを参加者に負担してもらう程度でよいでしょう。会場費が10000円を参加者20人程度を想定しているのであれば、参加費500円などにします。

仕事に関するイベント・セミナーはもう少し複雑になります。無料で開催するのであれば、どこか別のところで収益を上げなければなりません。例えば体験イベントを開催して後日それを使ってもらうようなものです。ウェディングフェアなどはこれにあたります。

無料イベントの場合、イベントの内容に満足できなくても参加者はお金を払っていないので問題ありませんが、有料イベントは参加者がイベントの内容に対価を支払うことになります。

有料・無料どちらの場合でも、イベント内容に満足しなければ、その後の購買にはつながらないのは同じですが、有料イベントの場合には参加者がそのイベントの内容自体にお金を払っているため、不満が高くなる可能性があります。

金額と内容が見合っていないと、その不満はより大きくなりますので、有料イベントにする場合には、他の同様のイベントと比較して、妥当な金額はいくらかを慎重に検討する必要があります。

以下、無料と有料イベントのメリット・デメリットをまとめました。イベントの目的や内容を考えて、どちらがより集客できるかを判断しましょう。

無料イベントと有料イベントのメリットデメリット
無料イベント 有料イベント
  • 「無料」で注目させることができる
  • 参加費を払う必要がないため、人を集めやすい
  • ただし「無料なのでとりあえず申し込んだ」人も多く、ドタキャンなども起きやすい
  • お金を払っても参加したいというモチベーションの高い参加者を集められる
  • 参加費と内容が見合っていないと、なかなか申し込まれない
  • 有料であることを納得させるだけの内容と信頼度が必要

ポイント

無料のイベントは参加費が掛からないため、少しだけ興味があるという層が気軽に参加できます。その反面、お金を払ってでも学びたいという層には物足りないということにもなりかねません。イベントの目的をしっかりと考え、有料にするか無料にするかの判断をしましょう。

参加費以外の収入を考える

イベントの収入は参加費以外から得ることもできます。商品を宣伝する時間・場所をイベント内に設けたり、チラシなどを配布することで、企業から協賛費をもらいイベントを支援してもらいます。いわゆるスポンサーで

す。

参加費は参加者数によるため、申し込みを開始しなければ、実際にどれくらいの収入になるかわかりませんが、協賛費はイベントの開始前に確定させることができるため、イベントの企画書などを作り、協賛企業を探すとよいでしょう。

またイベントの内容次第では、グッズや商品の物販・飲食などでも収益を上げることができます。

参加費以外に収益を上げることができれば、収益を上げることができますし、参加費を安くしたり、無料にすることもできます。また大会場で多くの人数を集めなくとも赤字を回避することができるかもしれません。

ポイント

参加費以外でも収益を得られます。特に協賛企業の存在は、安定したイベント開催を行うためには欠かせないものです。イベント開催の実績がなければ協賛を得るのは難しいかもしれませんが、イベントの積み重ねることで評価してもらえます。また内容がしっかりして集客の見込みがあれば、評価してくれる企業は少なくないので、協賛企業探しはぜひ検討したいところです。

参加費で赤字にさせない工夫

前述の協賛企業を見つけてイベントを支援してもらったり、物販なども赤字を作らない工夫ですが、参加費でマイナスにならない工夫も必要です。

前払いとキャンセルポリシー

まずは当日払いではなく、事前にお金を支払ってもらう工夫です。イベント開催前に支払いが終わっているため、ドタキャンされにくいのが特徴です。

もちろん予定などが入って、キャンセルする人も出てくることも多いため、あらかじめキャンセルや返金に関する決まり(キャンセルポリシー)を作っておきましょう。旅行や宿泊代金をキャンセルする場合に、「○○日前以降のキャンセルは100%」と同じようなイメージです。

定員がいっぱいになったイベントは、他の人は申し込みができなくなってしまいます。ドタキャンの場合、その分の席を埋めるための新たな受付ができないため、1席分損になってしまいます。

キャンセルポリシーの内容はイベントの規模や性質で変わりますが、3日前以降のキャンセルは全額返金しないように設定しておけば、仮にキャンセルが出ても、全額返金せずともよく、時間に余裕があれば追加申し込みも間に合います。

イベントのキャンセルポリシーの例

キャンセルポリシー

  • セミナー本編・懇親会共に、開催の3日前(xx月xx日)までのキャンセルには全額返金対応いたします。
  • 前々日、前日、当日のキャンセルは返金を行いませんのでご了承ください。

キャンセルポリシー

申し込んだ講座・イベントをキャンセルされる場合は、弊社キャンセルポリシーに基づきキャンセル料が発生いたします。申し込み前に必ずご確認ください。

キャンセル料

  • 連絡なしの不参加:受講料の100%
  • セミナー3日前~当日:受講料の100%
  • それ以前のキャンセル:無料

イベント告知サービスには、空席が生じた場合にはキャンセル待ちの人を繰り上げ申し込みさせる「キャンセル待ち」機能を持つものがあります。空席をできるだけ減らすために、このような機能を持つ告知サービスを使うのもよいでしょう。

早割を使う

事前に支払う場合と当日に支払う金額が同じであれば、参加者が早めに申し込むメリットは座席の確保しかありません

そこでもう一つ参加者にメリットを出すために、早めに申し込んだ人の料金を割引する「早割」を導入しましょう。例えば参加費が5000円のイベントであれば、30日前に申し込めば4000円、14日前までに申し込めば4500円のように設定し、お得感を出すことで早期の申し込みを促します。

早く参加者が集まれば、告知の回数や運営にも余裕が出てきます。参加費の収入は少し減ってしまいますが、多くの人に参加してもらうことで、その人たちに次回も継続的に参加してもらうメリットは大きなものとなります。

団体での申し込みを受け付ける

また2名以上の同時申し込みによる割引を行ってもよいでしょう。複数名で申し込んだ分安くなれば、参加しやすくなります。会社の部署単位や友達同士で参加してもらえば、席もその分埋まります。

ポイント

集客の工夫はイベントの内容とは関わりのない部分ですが、人が集まることそのものがイベントの満足度を上げることもあります。他にも参加者のみの特典を付けるなど、参加者を増やすアイディアはいろいろとあるはずです。イベントの内容に応じた自分なりの集客案を考えてみましょう。

参加費の決め方

赤字にならなければよいということであれば、必要な経費(会場費+人件費+雑費)を定員で割れば最低限必要な金額が出てきますが、実際にはキャンセルが出たり、追加で費用が掛かったりするため、賛金協賛金やその他の収入を織り込んで、少し利益が出るように参加費を決めるようにします。

ただし、その結果が同じようなイベントより倍の参加費になるようであれば、比較されてしまい、あまり参加者が伸びないこともあります。

イベントの内容に価値があるとわかれば参加費を上げることはできますが、初めてイベントを開催する場合には、価格に見合った内容であることを伝えるのは難しいです。困ったときには、予算を見直し他のイベントと同じくらいの価格・会場で開催できるように工夫しましょう。

セミナー予算と参加費の例
項目 費用
講師料 100,000円
会場費(付帯設備込み) 80,000円
交通宿泊費(1泊) 30,000円
スタッフ謝礼 10,000円(5,000円×2名)
昼食費(講師・主催者・スタッフの4名) 5,000円
雑費(印刷代・文具など) 5,000円
230,000円

採算ライン(予算合計は230,000円)

  • 参加費5,000円 46人
  • 参加費4,000円 58人
  • 参加費3,000円 77人

協賛金が50,000円の場合の採算ライン(予算合計は230,000円-50,000円=180,000円)

  • 参加費5,000円 36人
  • 参加費4,000円 45人
  • 参加費3,000円 60人

また参加費が上げられない場合には、会場を広くして参加者数を増やすことで補うのが普通ですが、現在は新型コロナウィルスの対策で、会場の定員が著しく少なく設定されていることも多いです。会議室などでは定員が半分くらいになっており、参加者数を増やすのが難しい状況であることにご注意ください。

ポイント

参加費は同じような内容のイベントを参考にして決めましょう。他のイベントより高すぎる設定だと、参加者は集まりにくくなります。予算が足りずに金額が高くなりそうであれば、会場費・スタッフの人件費などの経費を見直しましょう。

最後に

イベントは開催すればかならず満席になるものではありません。満員なら赤字が出ないというギリギリの参加費の設定だと行き詰まります。集客の目標は少し低めに見積もって、多少集客に失敗しても大きなダメージがないように金額を決めていきましょう。