目的・参加者のターゲットを決めよう

一口にイベントといっても、内容や参加者や規模はまったく異なります。今やろうとしているイベントにはどのような内容で、どのような人に参加してほしいかをきちんと把握することで、より満足度の高いイベントを開催することができるようになります。

イベントの種類

さまざまな種類のイベントがありますが、内容はもちろん運営がしっかりしていてこそ、イベント本体を楽しんでもらえます。イベントの性質を把握することで、イベントのどこに特に注力すればよいかを整理しておきましょう。

セミナー・勉強会・講演会

情報や知識を提供することで新規顧客を得たり、商談につなげるためのステップにしたいなどの思惑があります。

講師を専門としている人も多くいますが、小規模のセミナーでは主催者自身が講師を兼ねることもあります。

10人以下の小規模なものから大きなホールを借りての数百人を集めるものまであり、貸し会議室やレンタルスペースなどを利用して開催されます。

小規模なイベントであれば、スタッフは主催者1人でも問題ないでしょうが、それ以上の規模になったり、講師を外部から呼ぶとなると少しスタッフが必要になります。主催者が1人の場合でも、何かあった際に手伝ってもらえる人が1人いた方がよいでしょう。

参加者側の目的は主に勉強・スキルアップであるため、継続的に開催したいのであれば、満足度の高いイベントが続けられるようにしなければなりません。

製品・サービスの宣伝

前述のセミナー・勉強会・講演会などと同じようなタイプのイベントですが、製品やサービスなどの紹介がメインとなります。紹介だけの場合には宣伝色が強くなりすぎて敬遠されやすくなるため、参加者が興味を持つ内容の講演などと組み合わせて開催されます。

例えば金融サービスの宣伝をするために、世界の経済や金融に関する著名人の講演が付いてくるなどです。最終的な目的は宣伝なのですが、その商品に興味を持っている人は参加率が高くなるでしょうし、商品のことは知らないが講演を聴きたいという人に対してサービスに対する認知を高めることができます。

もしこの講演が金融ではなく、栄養に関するものであれば、金融に興味のある人には「私には関係のないイベント」だと思われ、栄養に興味を持っている人には「私には関係のないサービス」と思われてしまうでしょう。

ある分野に興味を持っていて、より詳しく知りたい・お得な情報を知りたい・より便利に暮らしたいと考えている人に対し、その分野に関連する識者の話とその手助けになる商品・サービスの組み合わせでアプローチしていくタイプのイベントです。

フェスティバル

フェスティバルにもさまざまなものがありますが、不特定多数の人が集まるイベントです。音楽や出店などが考えられますが、そのイベントの内容すべてに興味を持っているわけではありません。

音楽フェスティバルですと、いろいろなバンドや団体が集まり、出演者それぞれのファンが集まってきます。イタリアフェスティバルであれば、イタリアのさまざまな食事や文化などの別々の興味を持った人が集まってきます。

参加者がどのような人かを細かいところまで絞り込みにくいのがこのタイプのイベントですので、ある程度幅広く受け入れられる内容にします。その上で、音楽であれば目玉になるバンドや歌手、食事であれば名店による出店などが必要です。

全体的に大きなイベントになりがちなため、出店者・参加者を手助けするための多くのスタッフ・ボランティアが欠かせません。設備・機材も多くなりがちで、準備期間も長めになります。

パーティー・異業種交流会など

講演会のように講師がいる場合もありますが、知識を得ることよりも、人との交流が中心になるイベントです。他の参加者の話から学ぶことと、人脈作りが主なテーマで、数名から数十名の規模のものが多く見られます。

長く継続しているパーティーや異業種交流会では、幅広い属性の参加者がいるのが普通で、参加者同士のトラブルを防いだり、満足度を下げないように主催者がコントロールしているケースもあります。例えば勧誘行為をさせないなどの禁止行動を設定したり、参加者同士の会話などをチェックし、マナー違反をしている人がいれば次回は参加させないなどが行われます。

これらは主催者の判断によって行われるため、主催者自身の性格やキャラクターが強く反映されるタイプのイベントです。

会場は貸し会議室・イベントスペース・居酒屋・レストランやカフェなどさまざまな場所が使われます。

ポイント

イベントにはさまざまなタイプがあり、それぞれに異なるノウハウがあります。自身でイベントを開催する前には、ぜひ似たようなタイプのイベントに参加し、運営する側の視点でイベントを見てみましょう。よいイベントには必ず学ぶべき点や主催者の心配りなどがあります。よいものをどんどん取り入れるようにして、自分のイベントの形を作っていきましょう。

イベントのテーマを決める

何を伝えたいのかを具体的に考える

イベントを行う動機は人それぞれですが、多くの人の賛同を得られたいのであれば、その目的をできるだけ具体的に伝える必要があります。

例えば、「アロマテラピーを広めたい」ということであれば、単に伝えるのではなく、「だれが」「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「なぜ」「どのように」伝えるのかを考えます。

誰しも多くの人にイベントに参加してほしいのですが、参加者の心に響かなければ参加してもらえません。参加してもらうためには、少しだけ興味を持っている人などに「イベントの対象者は自分のこと」であると思ってもらわなければならないのです。

前述のアロマテラピーであれば、何も考えずに漠然とイベントを企画すると、

  • 主催者(アロマテラピスト)が
  • いつでも
  • どこでも
  • 多くの皆さんに
  • アロマテラピーを
  • 自分が教えたいから(自分中心)
  • イベントを開催する

となりがちです。そうではなく、具体的に参加者のイメージを持って、

  • 主催者(アロマテラピスト)が
  • 平日の午後に
  • 近くの公民館の会議室で
  • 時間に余裕がある主婦向けに
  • アロマテラピーが手軽にできることを
  • 自粛生活をよりよいものにするために
  • イベントを開催する

のように、参加する人の視点に立って考えるようにします。このように具体的に考えていくことで、イベントの大枠は決まってくるのです。

上記の例では参加者を「平日の午後に」参加できる「時間に余裕がある主婦」としましたが、本来はこの内容を決めるまでにさまざまな条件があるはずです。主催者自身が平日の午後の都合がよいということもあるでしょうし、主婦向けの内容に特に詳しいということから、他の対象者に教えるより充実した内容になると考えたのかもしれません。

自身の都合やスキル・興味などさまざまな要素でイベントの内容は決まってきますが、漠然と自分のやりたいことだけを考えずに、参加者がどのような人で、どういう内容に興味を持ってくれるかどうかを常に考えるようにしましょう。

大きなテーマから詳細を展開する

前述の通り、ある程度イベントの大枠が決まったならば、もう少し細かくイベント内容を決めていきましょう。

先ほどの「だれが」「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「なぜ」「どのように」を見える形を変えていけばよいのです。

  • だれが → 主催者のプロフィール作成
  • いつ → 開催日の決定
  • どこで → 会場探し
  • 誰に → 参加者がいそうな場所・告知先の想定
  • 何を → イベントで伝えたい内容やテキストを作る
  • なぜ → なぜを解決する内容にする
  • どのように → イベント開催後の参加者の反応を見据えた運営を考える

このときに、イベントのタイトルをまずしっかり決めるようにしましょう。「アロマテラピー講座」だけでは訴求力が弱いため、「自粛生活を快適に乗り切ろう 自宅で使えるアロマテラピー基礎編」のように、タイトルを読むだけで学ぶ内容がわかるようにしなければなりません。

タイトルの付け方については、効果的な告知ページとタイミングのページも合わせてご覧ください。

企画を進めるうちに最初に考えていたことを内容がずれてしまうことがあります。結果的に誰の心にも響かないイベントになってしまいかねません。すべてを集約したタイトルはできるだけ変えず、誰にどのように伝えたいのかを確認しながら、イベント企画・セミナー企画を進めていきましょう。

ポイント

よほど個人の魅力がある場合以外は、人を集めたいというだけでは集客は難しいものです。来てほしい人に趣旨が伝わり、参加したいと思ってもらえるような内容を具体的に作り上げて、はじめて告知・宣伝が活きてきます。

イベントの目標を設定する

目標は数字で具体的に表す

イベントの目標は目的と似ていますが、目的が「イベントで集客して製品を広く知らしめたい」というのに対し、目標は「参加した人のうち10人が製品を購入してくれる」のように、具体的に数字を出すのが理想的です。

10人の購入に対し、実際にイベントを開催したところ5人しか購入しなかったのなら、なぜ目標の半分しか到達しまったのかを考えることができ、改善することができます。

逆に目標の数字が決まっているのであれば、そこから逆算してイベントの規模や参加費などを考えることもできるでしょう。10人に買ってほしければ、10人以下のイベントでは意味がありませんし、せめて50人くらいは集めなければならないなどと考えることもできます。

この目標には購入数や入会者数、お問い合わせ数、名刺交換できた人の数など、数字で表せるようなものであれば、何でも設定できるでしょう。イベントの参加者数だけで、目標が達成されるということはまずありません。

趣味のイベントでなければ、できるだけ目標は設定するようにしてください。

ポイント

目標が達成できたかどうかはイベント後でなければわかりませんが、目標を設定していなければ、次回の開催を成功させるための大きな情報が欠けることになります。高すぎず低すぎない目標を設定し、クリアすればまた新たな目標を設定しましょう。

ターゲット層を考える

同じ内容でも感じ方は人によって異なる

イベント内容によって、参加者の層はまちまちです。同じイベントであっても参加する人によっては感じ方も変わります。

例えば、「はじめての将棋」のような講座をプロ棋士を講師で開催するとしましょう。内容的には入門ですが、プロ棋士が教えるということで、参加費は1万円です。これを高いと感じるか安いと感じるかは受け取る人次第です。

将棋の経験があり、そのプロ棋士の名前を知っている人であれば、「その棋士に教えてもらって1万円の参加費は破格の安さだ」というかもしれません。その一方で近所のカルチャーセンターで開催される1000円の入門講座を知っていれば、「1000円で十分。1万円は高すぎる」と言うかもしれません。

このように同じような内容のイベントであっても、立場によって感じ方や考え方は変わってしまうのが普通です。それに配慮しようとすると、「みんなに来てほしい」という意識が生まれてしまい、本当に参加してほしいという人が誰かというのを見失い、当たり障りのない告知ができてしまうでしょう。

そのような失敗を避けるために、イベントのターゲットはどのような人かはしっかりと絞り込み、その人たちに向けた内容を作り上げていく必要があります。

ターゲット層を決めるのに考慮する内容

ターゲットをどこまで絞り込むかは、イベントの内容次第ですが、例えば「A」というゲームが好きな人が集まって一緒に遊ぼうというような内容であれば、

  • Aというゲームが好きな人なら誰でも

などがあります。

特に注意しておきたいのは、仕事に関わるイベントにおける役職や職域です。数万円という価格設定にすると、経営者や会社の研修費としては高額ではありませんが、個人で参加するのであればかなり高いと感じられてしまいます。

特定の業界向け(例えば美容師)であっても、オーナーなのか一従業員なのかで、どのくらいまでの参加費を払えるかどうかは変わります。ターゲット層を決める際には必ず職域を意識しましょう。

「2020年夏の流行ヘア」を伝えるならば、「これで大繁盛! 美容院オーナー向け 2020年夏の流行ヘア」と「見習い美容師を抜け出せ! 2020年夏の流行ヘア」で、参加者の参加費も変わってくるはずです。

イベントに慣れていないと、少しでも参加者を増やしたいと考えて、参加者の間口を広げてしまいがちですが、かえって誰にも響かない内容になってしまいます。なぜそのイベントを開催するのかを考えて、ターゲットはしっかりと絞り込むようにしましょう。

ポイント

ターゲット層の設定は、集客に直結し、予算や参加費などにも大きな影響を与えます。主催者がほしい金額ではなく、参加しやすい金額を確定させるためにも、ターゲット層は最初の段階で決めておきます。

もし異なるターゲット層にも参加してほしいのであれば、そのターゲットに向けた別のイベントを開催することをおすすめします。

内容を企画書にまとめる

様式にはこだわらない

当日の運営に関する細かい部分が決まっていなくとも、ある程度イベントの概要ができていれば、企画書にまとめることができます。

企画書というと少し難しく考えられるかもしれませんが、趣旨がわかりやすく伝われば、様式やデザインにこだわることはありません。必ずしもパワーポイントを使わなければならないこともありません。

社内や協賛企業向けに開催趣旨をまとめることができるようになれば、イベントも開催しやすくなりますし、他の人にイベントの内容を説明したり、告知用のチラシなども作りやすくなります。

企画書の簡潔なまとめ方

企画書に最低限必要なのは以下の項目です。

  • 目的
  • 目標
  • ターゲット
  • 日時・会場
  • イベントの概要(詳しく決まっている場合はきちんと書く)
  • 予算(予算・参加費を決めるへのリンク)
  • その他の懸案事項・特記事項

これらを先述のように、できるだけ詳しく書いていきましょう。他の人に見てもらうのであれば、丁寧に書くのは大切なことですが、長すぎても読むのに飽きられたりします。簡潔にまとめるようにしましょう。

先ほどのアロマテラピーのイベントであれば、以下のような感じにまとめます。日付や会場・予算などは企画の段階では最終決定ではないので、書ける範囲で構いません。

企画書のサンプル例

予算については、概算を出してから提案する場合と、最初に上限が決まっていてその範囲でイベントを開催する場合がありますので、状況に応じて記載します。

簡単なテンプレートを用意しています。長文でなくてもよいので、まずはこのくらいの内容を埋められるようにして、企画書作りに慣れていきましょう。

企画書テンプレートのダウンロード(Word形式・7KB)

ポイント

よい企画書は体裁がよくできていることではなく、内容がよく理解でき、イベント開催後にどのような効果が生まれているかを予想しやすいものです。かっこよく書く必要はありませんが、丁寧に書くように心がけましょう。

最後に

イベントの目的やターゲットは、イベントの柱となるもので、途中でグラグラしてしまうと、思ったような成果は上がりません。 逆にターゲット・目的・目標が決まっていれば、細かい部分がどんどん決まっていくこともあります。これらの項目は一度決めたら、軽々しく変えないようにしましょう。