中国語教育・外国語教育ワークショップ 「やさしい」は「やさしくない」

企画・趣旨

このワークショップは、共同研究「ユーザー中心設計による中国語教育文法の構築―事例研究からの実用化と体系化―」（基盤研究(B)22H00683）の企画によるものである。本研究グループは、その前身で「ユーザー視点による中国語教育文法設計の方法論構築―項目の分散化と説明の容易化―」（基盤研究(C)19K00838）という研究課題のもとで、文法説明をやさしくすることや、学習者にとってやさしい表現形式の使用場面での有用性にも取り組んできた。

今回のワークショップでは、学習者にとってのやさしい表現形式について、これまでのアプローチより視野を広くとり、「やさしい」とはどういうことなのかあらためて考察したい。中国語教育においても、外国語としての日本語教育においても、「やさしい」表現は、必要性が高く実用性も高いことは容易に想定し得るが、そのやさしい表現を、教育現場でまたは実際の社会で提示できるようになるまでの過程で検討すべきことは、まったくやさしくはない。このような観点から、中国語教育と日本語教育に従事する研究者の実践例をもとに、「やさしい」表現形式についての議論を展開しつつ、そこから何かしらの示唆を得られる機会にしたい。

プログラム

13:00 – 13:10　

趣旨説明・諸注意                                         

鈴木慶夏（神奈川大学）

13:10 - 14:00

みんなのための「やさしい日本語」の構築、その難点

岩田一成   （聖心女子大学）

発表者は、「やさしい日本語」作成の実践活動に関わっている。公用文、病院の文書、学校のお便り、ファッション雑誌などさまざまである。これらの文書は、そもそも日本語ネイティブにとっても難解で読みにくいものが多い。そのため、「やさしい日本語」は、外国人のためだけではないと言われるようになっている。タイトルに「みんな」とつけたのは、この理由による。文章をわかりやすく書くことは簡単なことではない。各種実践活動から見えてきたことを報告する。

14:05 - 14:55

日本人学習者のための「やさしい中国語」の構築、その難点

―日中（英）対訳型オーディオ絵本作成プロジェクトを例に―　

西香織      （明治学院大学）

発表者が目指す「やさしい中国語」は、中国語圏で規範とされる中国語とは多少異なっていてもよいので、より多くの日本人住民（中国語学習者）が、日本で、中国語圏から来た住民とより容易に交流できるような、「発信」することに重きを置いたものである。

その一環として、大学の 2 年生授業において、まず自分の日本語表現を平易化する作業を行ったうえで、より容易な文型、語彙を使った、「日中（英）対訳型オーディオ絵本（Book Creator 利用）を作成するプロジェクトを行った。その過程で生じた「やさしさ」を追求することの難しさなどについて、プロジェクトの具体的な内容とともに紹介したい。

15:00 - 15:50

生成系AIの助けを借りて「やさしい中国語」「やさしい日本語」を書く　　　　　　　　　　　

清原文代    （大阪公立大学）

ChatGPT、Bing、Bardといった生成系AIは、事実の確認には向かないが、いかにもありそうな文を綴ることには長けている。自分の第一言語であっても「やさしい」文を綴ることは難しい。これらの生成系AIを「やさしい中国語」「やさしい日本語」の作成に利用する方法を探求する。

16:00 – 16:20

質疑応答

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